第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
肌に触れる空気、雨粒の感覚が変わる
身体を駆け巡る血の感覚が変わる
獣のような―私の全力
「ん…じゃあ私も、本気出す」
私が"引き出し"を開けた事を感じた
その本気を信じたエリーは、こう言ってボスへ向き直った
相変わらずボスは空中にいる
だがそれを…叩き落としてやる
「リリィ」
準備万端とばかりにエリーが構える
それはダッシュする構え、私もそれに続き―
「行くぞおおぉぉぉぉ!!」
同時に、全力ダッシュ
ただ真っ直ぐに、敵へ突き進む
氷塊が降り、火球が襲う地上を、私とエリーは駆け抜けていく
雨粒は弾丸のように身体に、顔に当たり、ダメージとはならないものの痛みを私達二人に与える
直後、真っ直ぐ振り下ろされたボスの剣を、左右に別れて回避―互いの姿が見えなくなるが、私はエリーがやられたとは思っていない
向こうもそうだろう
その確信を当てるかの如く、ボスの剣、その持ち手へ跳躍
エリーも同時に跳躍したようで、同時に着地―合流し、腕を駆け登る
「行くよ」
ある程度登った所でエリーが口を開く
「いつでも!!」
私が答えた直後、エリーはチャクラムを私に射出しながら、ブーストをかけて跳躍する
チャクラムを掴んだ私もブーストを伴って跳躍
その高さは、ボスの頭部を、越えていく
チャクラムが巻かれ、私はエリーの方へ引っ張られる
直後、エリーは空中で回転
そして―
「飛ん…でけぇぇ!!」
私をボスへ飛ばす
真っ直ぐに飛んだ私―狙いはたった一つ
ボスを討ち取る事
空中で剣を構え、ブーストと武器スキルを伴わせ―一閃を、叩き込む
「せえぇぇぇやあぁぁぁぁ!!!」
ボスの肩口から深く入った剣は、重力通りにボスの身体を真っ直ぐに斬り裂き、斬り裂き斬り裂き斬り裂き斬り裂き―
―――真下から、抜けた