第10章 第11層~第20層 その2 "Duet"
敵は二体のまま悠々と着地し、こちらに振り向く
表情に値するものは敵に存在しないが、まるで"してやったり"というような顔をしているように見えるのがプレイヤー陣を腹立たしく思わせる
敵は次に背中合わせとなり、二体の間に棒か何かが支店になっているかのように回転し始めた
回転は激しさを増し、敵が小さな竜巻のようになる
そして―竜巻が、私達に、襲いかかる
それは通常の竜巻ではなく異常の竜巻で、二足歩行をする私達に対して垂直に襲いかかってきたのである
「チッ…」
アレに近距離戦闘は難しいだろう
そう感じた私は珍しくも、舌打ちをしながら跳躍―竜巻を回避していく
竜巻はそのまま先程までプレイヤー達がいた中央に上陸―多数のコンクリートを舞わせる
それと同時に敵の回転が止まり、竜巻が消え、元の二体に戻る
非常にタイミングが悪い―この瞬間に私はそう感じた
現状、敵は二体とも停止しており、言わば完全な的なのだ
しかし、竜巻を回避する為に私は跳躍―今は空中にいる
この空中という位置から、別方向へ向かう事は自力ではまず出来ない
何故ならそれは物理法則だからだ
私達人間は空気のみの空間を蹴って、跳躍する事は出来ない
故に私は今、攻撃チャンスを逃す事に歯噛みする他なかった
「ん…大丈夫」
しかし、エリーは違っていた
そう、彼女の武器は弓矢だ
故に彼女はこの位置からでも―射てる
エリーは空中で且つ後ろへ跳躍しているという勢いが付いているにも拘わらず、構える
そのまま、何事も無い当たり前の事の如く二本の矢を射る
それらは正確に敵の額と思しき部分に命中した
「こういう時のテンプレは、分かってる」
その言と共に着地、間髪入れずにもう二本、射かける
それらもまた正確に、同じタイミングで敵の頭にあたる部分に命中した