第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
目を細めて、光る水面を注視する
視線の先には釣糸―そこから繋がる釣竿へ視線を移動させる
(まさか…)
そう思った時、釣竿が少し揺れるのを確かに見てしまった
「キタコレぇぇぇぇ!!」
その瞬間、急に目を見開いたケンタが叫びながら釣竿を引っ張り始めた
力一杯引っ張る彼の手の中の釣竿は、テレビでも見た事がないくらいのしなりを見せ、相手がどれだけ強いのかを物語っている
まず、ここで本当に釣れたんだ―と目の前の事実に感心しているとケンタが徐々に、水面へ引っ張られ始める
必死に耐え、靴の底を磨り減らすが確実に力負けしている
「ちょ、ちょ、ヘルプヘルプ!」
「全くしょうがない奴!」
ユウのボヤきに心の中で賛同しつつ、ケンタの持つ釣竿を他の面子と共に掴む
それは思わず、自分の身体が持ってかれてしまいそうな程であり、逆に自分の身体を支える必要が出たかもしれないと感じる程であった
「どうよコレ!絶対大物っしょ!」
「これでお前、錨だったとか船に引っ掛かったとかいうオチは認めないからな!」
この場でありながら自慢気なケンタにシンジ先輩が釘を刺す
しかし引っ張っている筈のケンタを始め、その援護に入った私達全員も引っ張られている