第7章 第1層~第10層 その6 "Once More"
ジンと部長―二人のテスターが並び立つ
部長が自ら一人で出るとは…正直この世界ではなかった事かもしれない
「あぁ心配しないでくれ。ちょっとシンジが世話になったから……灸を据えてやるだけだ」
私達に背中を向けたまま、語る部長の声は普段と違う
少し…怖い…
ボスを正面に二人が得物を構える
それぞれの腕、足、武器が光を纏い、短期決戦を試みようとしているのが後ろの私達にも伝わってくる
「一撃だけぶつける。後は好きにしてくれ」
「丸投げか?なるほど、だったら俺も好きにするぞ」
二人が今二人にしか伝わらない問答をした直後、ボスか大きく呻き二人へ真っ直ぐ駆け出した
「俺が言いたい事は一つ、お前に崖で粘る権利は無い。それにも拘わらずシンジを引き込もうとしたその無駄な執念に…ちょっとイラッと来たんだ!!」
部長が叫ぶと同時に槍を投げる
腕と足のブースト、そして武器の三種のスキルを伴ったそれは、ボスの胴体に命中―巨体を貫き、大きく滑らせた
「まぁ、しつこいのは嫌われる典型だな」
それをゆったりと追ったジンが堂々ボスの前に立つ
そして、スキルを伴った両手剣が上から振り降ろされ―ボスを真っ二つにし、砕け散らせた
漸く元の迷宮区に戻る空間
やっとだ…やっと本当にボスを倒し―ここにおいて、第八層はクリアされたのである