第7章 第1層~第10層 その6 "Once More"
次の区画を目指している途中、振動が起き、また視界に残り時間が現れる
残り2:00―
さっきよりも短い、だが事前の探索誘導が功を奏したのか少なくとも私達は素早く動けてはいる
皆は次の区画に辿り着いているだろうか
答えは着いてみなければ分からないが、どうしても不安に感じてしまう
そう思いながら、重なったコンテナがトンネルのようになっている部分を走っていると―突如天井のコンテナを破って、私の目の前に顎が現れたのである
「うわっ!!」
急に出てきた奴に対処は余り出来ない
しかし、ダメージを貰う訳にはいかない
無理矢理上半身を反らしながら体勢をスライディングのように低くして、乗り切る
胸元が顎に削られそうになる恐怖を感じたが、ダメージは無い
まさか上から来るとは…確実にボスが私達の位置を理解している事になる
化物と言えど侮れなくなってきた
直後のエリーは顎の刃部分を飛び越えるように回避、何事も無かったかのように走り出した
そして殿のシンジ先輩は避ける等考えていないと言わんばかりに、自身の得物である曲刀を走りながら構え―
「邪魔をするな!!」
武器スキルとブーストスキルを伴った攻撃で顎を斬った
ダメージ著しい顎は、粘液をシンジ先輩にばらまきながら上方へ消えていった
顔やら身体やら粘液まみれのシンジ先輩は唾を吐くように口の中に入ったのであろう粘液を吐き出した後、また走り出した
「大丈夫ですか、それ」
シンジ先輩も第八層フィールドにいたゾンビに対しては、随分と嫌そうな反応をしていたのを思い出し、走りながら後ろのシンジ先輩へ話しかけた
「スプラッタは苦手だ。だが、アレに至っては慣れた」
慣れたんですか
絶対にアレみたいな系統に慣れる事は無いだろう友人の顔を浮かべながら光、トンネルの出口へ走る
そしてトンネルを抜けると―目指した新たな区画であった