第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
そこから先の事態は速かった
放たれた矢が光となり、ボス―正八面体の頂点に吸い込まれた
一瞬の静寂
直後、吸い込まれた所とは対称に位置する頂点を火を吹き、正八面体が更に細かい四角形―ドット状の結晶となり、砕け散った
空間が迷宮区のものに戻る
それまであったビルの風景は失せ、薄暗い雰囲気が支配を取り戻す
「ふぅ…」
ボスへトドメを放ったエリーは、漸く終わりと溜め息を吐き力を抜く
色々あったが…これで勝ち
喜ぶよりも安堵が漏れる
しかしこの勝利、決して彼女の才故のものではない
彼女を信じ、彼女に信じられた全てがあってこその勝利である
「見せてもらったわ」
後ろより声―エリーが振り向いた先にはヨーコ
顔はまだ直前と同じく真剣、そしてゆっくりと続ける
「射撃向きじゃないわね、あなたのやり方」
これにエリーは動じない
それが分かるとヨーコは少し笑顔になり―
「でも、気合は流石ね。天晴れよ」
どうやら認めたという事だろうか
仮に違っていても、証明し続ければ良い
自分にある願いを―
「皆、私を信じて…私も、皆信じただけ」
故に彼女はこう答え―
ここに第七層はクリアされたのである