第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
「エリー!!」
頭が地を向き、血が昇るのを感じながら槍を持つ左手を伸ばす
直後、槍と手にチャクラムが巻き付き、私を引っ張る
急な重力と勢いを感じながら姿勢を整え、皆と合流する
「とりあえず、大丈夫です」
聞かれる前に答えながら周りを見ると、先の針が幾らか転がっている
なるほど、皆も針に曝されていたのか
部長に槍を渡し、改めて前を見ると矢の拘束と壁から抜け出した敵―そしてその上から壁伝いに二体、またも蜘蛛が降りてきた
最初の一体を庇うように地に降りた新たな二体―確かに蜘蛛である
蜘蛛ではあるが、違いがある
蜘蛛の胴体部分から人間の上半身のような物が出している
色は身体と同じ黄色と白なのだが、片方は筋骨隆々と言え、もう片方はしなやかさと柔らかさを持っていた
「なるほど…雄型と雌型か。って事は今までのはさしずめ、子供か何かって訳か」
こちらを見る敵を冷静に分析する部長
雄型に雌型…なるほどまさにその通りだ
尤も、人間の上半身部分は妙にリアルで…気持ち悪い
「さて三体だな……キョウヤ、どうする?」
シンジ先輩の問いに部長は一瞬目を閉じ、また見開いた
「…最初の一体をどうにかする。俺とエリーで何とかするから、残りの二体を分担してやってくれ。誰がどっちをやるかは…各々の判断に任せる…行くぞ!!」