第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
砕け散った結晶が空中から降り注ぐ中、彼女は立っていた
空間がそれまでの迷宮区の意匠に戻る
今だ降り注ぐ結晶は雪のようで、白い彼女を更に白く染めていく
彼女は暫く放心したように立っていたが、欠損状態の効果時間が切れ、左腕が再構成された時、ゆっくりと振り向いた―
「っ!?」
同時に多くのプレイヤーが息を飲む
しかしそれは、雪のように降り注ぐ結晶の中佇む彼女に、美的観点を見出だした訳ではない
振り向いた彼女の顔を始めとした、前面に飛び散らした血や脳漿を浴び、滴らせる姿が彼女から思い起こさせたからである
何かされるのではないか―先の狂気とも言える行動から生まれた恐怖が、そう思わせたが直後彼女は何も言わず倒れてしまったので、特に何が起きたという訳でもなかった
「リリィ!!」
倒れた事に反応したキョウヤ他彼女をよく知る人物が駆け寄る
倒れた彼女は、いつもキョウヤ達が知っている彼女に他ならず、それ故に駆け寄ったものの頭の中は混乱で埋め尽くされていた
「オイ!オイ、しっかりしろ!起きろ!!」
肩を揺らし、大声で呼び掛けるも彼女が起きる気配は無い
「どうなってんだ…」
誰にも訳の分からない状況の中、キョウヤの呟いた言葉は普段より大きくその場に響いた
ここに第六層はクリアされたのである