第3章 --お仕事一日目
『白澤って呼び捨てにしてる女の子、確かに珍しい気がする。』
白「…今はまだ気づかなくていいよ。」
『なんか言った?』
白「なんでもなーい。」
そう言って、あたしの膝に頭をのせて、あたしの手を取る。これは見たことある!お香さんにしてもらってたやつだ!セクハラと言われながらも!!
『セクハラ。』
白「雛がほんとに嫌ならすぐやめる。」
『なにそれ?』
白「そんなに嫌?」
『(可愛い…)嫌じゃないよ。』
そう言って頭を撫でてあげる。気持ちよさそうに目を閉じ、されるがままの白澤。あたしよりも全然背の高い男の人なのに、なんだか弟みたい。ふふっと笑うと、「まぁ、今はそれでいいけど!」って不機嫌な顔して言うから、また笑った。
あぁ、穏やかな時間…。
そんなものは、空想で。
そんなものは、幻想で。
そんなものは、長く続かない。
わかっていたことだったのに。
どうしてあたしは、いつも望んでしまうんだろう。
どうしてあたしは、いつも忘れてしまうんだろう…
小さな命を何度も殺したくせに………
白「雛。」
『ぇ、ぁ…』
白「大丈夫。大丈夫だから、泣かないで?」
『あ、あれ…なんで、ご、ごめん!』
白「あ!だめだよ、こすっちゃ!」
『ごめん、なさい…。』
優しい時間が流れていたけど、あたしの心はそれを許さなかった…、いや、あたし自身が、あたしを許さない。
絶対に忘れないと、そう心に決めたのに。時間は忘却を連れてくる。それが、本当は大事にしていないんじゃないかって感じてしまう。どうしてあたしはこんなにも薄情で自分勝手なんだろう。こんな自分自身が__ばよかったのに…
白「僕が許すよ。」
『え…?な、なんの話…』
白「僕は吉兆の神獣だよ?神様なんだ。」
『……でも、』
白「でもじゃない。もう十分君は苦しんだ。」
『あたしはっ!』
白「僕が許したんだ。」
『うっうっ…うぅー。』
白「頑張ったね、雛は頑張った。」
泣いてることに気付いた白澤は、あたしの目の前に座り、よしよしと頭を撫でてくれた。あたしは抱き着いて、そのまま子供の様に声を上げて泣いた
白澤の顔は、涙で滲んで見えなかった。
あなたには、何もかもお見通しなのですか?