第3章 --お仕事一日目
『ハッ!だめです!あたし、あそこにいなくちゃ!』
白「えー。どうして?」
『お仕事ですよ、お仕事!』
戻ろうと振り向こうとしたが、白澤様の腕が背中にあること忘れてた…。
白「だーめ。」
『な、なんで…』
白「僕が指名するから。」
そうウィンクされ、頭が真っ白だった。
そんなあたしをつれて、部屋を借りた白澤様。
気づいた時には、新選組の方たちが飲んでいたような部屋にいた。奥にある襖は、ぜっったいに開けない。
白「雛ちゃん?」
『あ、すいません!』
一人の世界に入ってしまっていた。だめだめ。指名されたんだし。…隣でお酌でもすればいいんだろうか?
『あの、あたし、どうすればいいですか?』
白「え、何かする気なの?」
『だって、お客様でしょ?』
白「いいよいいよ、そんなのいらないから!」
『はぁ、でも、何もしないとか無理です。白澤様、お金払ってますよね?』
白「あー、まぁ、そうだけど。」
『なら、あたしに出来ることはしますから。』
白「もー、気にしなくていいのにぃ。」
『だめです!』
白「じゃぁ…どうしよう?」
『あたしに聞いちゃだめですよ。』
本当に困っているような顔をするから、あたしはおかしくて笑ってしまった。
白「あ、じゃあ、僕に敬語やめて?」
『え。』
白「で、白澤って呼んで!」
『それはさすがに…』
白「僕のしてほしいことだよ?しかも、簡単でしょ?」
『簡単なのは認めますが…』
白「ほらほら!僕も雛って呼ぶから!」
『それは全然いいですけど…。』
白「呼んでみて?」
『白澤……様。』
白「雛ちゃん?」
『白澤様だって、ちゃん付けじゃないですか!』
白「あ、ほんとだ。」
二人でクスクス笑いあって、穏やかな時間が流れる。こうゆうの、不思議と懐かしい。
白「雛。」
『は、はく、た、く…。』
白「もしかして、照れてる?」
『そりゃ恥ずかしいですよ…。』
白「かーわい!でも、敬語もなしだよ?」
『忘れてた…。あたし、言葉遣いが悪いから、敬語はやめない方がいいと思うなぁ…。』
白「僕のお願い聞いてくれるんでしょ?」
『はい…、じゃなかった、うん。わかった。これからはそうする。』
白「雛は、僕の特別なんだからね?」
そう笑った顔が、知っている気がした。