第3章 --お仕事一日目
白「雛、ちゃ」
『白澤様。あたしにはこれ以上しないでください。』
白「ぇ…」
『その他大勢の、そんな中の一人になりたくないです。』
白「雛ちゃん…」
『代わりがいるのなら、必要ないってことだから…。』
どうしてだろう…。この胸の痛み、あたし知ってる?少しでも気を抜くと泣き出してしまいそうで、あたしは目をぎゅっとつぶって…そのまま俯いた。
白「違うよ!」
『!!!』
白澤様の大きな声に、体がビクッとはねた。閉じていた目は自然と開き、あたしはゆっくりと顔を上げた。
白「違うの。違うんだよ?違う。違うから。」
『白澤、様?』
白「誰も代わりになれない。君は君だ。君じゃなきゃだめなんだ。」
『う、うそです…。』
白「嘘じゃない!お願い。ねぇ、…もう、僕を一人にしないで…。」
『………』
あれ?今の言葉は、あたしに向けられたもの…?
なんだか、白澤様の目が…あたしを映しているのに、あたしを見ていない。
あたしに向けられているはずの言葉なのに、あたしに向けられていない…。あたしを通して、誰かに話しかけているような…?背中の方から、ゾワゾワと嫌な予感がする。
なんだろうこの感じ。よくわからない感覚だ…。
『白澤様?』
白「あ…。」
『あの、』
白「ごめん。今のは、何でもないんだ。ほんと、ごめん…。」
『え、でも…』
白「いいんだよ、雛ちゃん。僕は、君とこうして話をして、一緒にいて、それだけで幸せなんだ。」
『それは…、あたしが女性だからですか?』
白「そこは、…今は内緒♪」
『え?』
白「男も女も、ちょっとくらい謎の部分があった方が、魅力的だよね!」
『あ、はい。それはまぁ。』
白「だから。僕も、今は内緒だよ。」
『今は…。なら、いつか、教えてくれるってことですか?』
白「そんな日が、来るかもしれないねー?」
…誤魔化されたのはわかっているが、もうこの話はやめにしよう。いつか。来るかもしれないその日まで…。
もしかして。さっきとゾワゾワとした感覚…。
鬼灯さまが、妖怪と言っていたことと関係あるのかな?