第9章 貴方と夢の国[R18]
そんな押し問答に花を咲かせていた時だった。
細長い廊下の突き当たりを右折したところでソレは現れる。
「グアァァア…ッ!」
『……っ⁉︎』
獣の咆哮にも似た奇声と共に、落ち武者ゾンビが出現したのだ。
爛れた肌。
落ち窪んだ眼球。
頭に刺さった矢。
眼前に迫ったソレは特殊メイクを施した人間とは言え非常に良く出来ている。
しかし、襲ってくる振りだけで客の体に触れることはしない様だ。お化け側にもルールがあるんだろうか。
『あービックリした……ね、銀さん』
「……」
『銀さん?』
「……」
銀さんは私の腕にしがみ付いたまま白目を向いていた。
『……駄目だこりゃ』