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三日月。☆黒子のバスケ

第1章 重ねた影。~私編~


必死で人ごみの中から
黒子くんを探す。

会いたかった。
会って、ちゃんと謝りたかった。

人をかきわけ、
必死に名前を呼んだ。

観覧車から右に一周したが、
でも、私の前には彼は現れなかった。

トボトボと近くのベンチに座り込む。

閉園を知らせるアナウンスが園内に響き渡る。
雪崩れるように人が出口へ歩んでいく。

私は一人、
キラキラと回り続けるメリーゴーランドを背に
私は座り込んで居た。

ふと、一筋の影は私の前に現れる。

「遊園地、閉まりますよ。」

私ははっと顔を上げ、
振り返る。

メリーゴーランドの光に照らされた黒子くんが立っていた。

「…いつものように叫ばないんですか?」
黒子くんはクスクスと笑うと、
私に手を差し伸べた。

私はその手を握った。

「うまく、行きましたか?」
黒子くんは悲し気な表情で私の顔を覗き込んだ。

私は頭を下げた。

「今まで本当にごめんなさい…。」

私が謝ると、
黒子くんは静かに言った。

「最初から知っていました。」

「・・・え?」

驚き顔をあげると、
黒子くんは笑っていた。

「…青峰くんの代わりでも…嬉しかったんです。」

黒子くんはクルクルと回るメリーゴーランドを見つめた。

「たとえ僕を通して別の人を見ていても、愛しそうに僕を見つめてくれる君の顔が僕は愛しくてたまらなかった。ずっとこのままでもいいって…思ってました。」

「でも、それではダメだったんです。僕が君と居ることで、君は決して幸せにはならない。君の幸せを考えていませんでした。すいませんでした。」

そう言って黒子くんは深く頭を下げた。

「そんな…」

私が今の気持ちを言葉にするのに戸惑っていると、
黒子くんは私の腕を引っ張った。

「閉まってしまいます。帰りましょう。」

その背中をじっと見つめて…
私は何も言えない自分を

呪いたいほど憎んだ。


でもきっと、
この気持ちを口にしてはいけない気がした。

私は…

いつの間にか


彼の事を好きになっていた。


彼に好きだと伝えると、
きっと、彼を裏切ってしまう事になる。

私はただただ
彼に腕を引かれて

そのまま遊園地を後にした。



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