第1章 熱
そうして今度は私が彼の体に見蕩れていれば、彼からまたクスクスと笑う声が零れる。結局はお互い様なのだと、二人で静かに肩を震わせた。
けれどそれも一瞬の事で、すぐに彼は私を引き寄せる。近かった距離は更に縮み、肌と肌が密着する。引き寄せられる際に降ろした、前を隠していた腕は彼と同調するように、彼の背中へと回される。とっても不思議な感じ。こうして互いの息が苦しくなるほど既に強く抱きしめ合っているのに……、こうして互いの熱でとろけそうなのに……、まだ体は一つになりたいと願う。本当に、まだまだ物足りない。もっとこの温もりに求められたい。触って欲しい。感じて欲しい。食べられたい。食べ尽くされたい。
決して口には出さないが、考えるのは自由だろう。こんな知性も理性もなくして、本能だけで彼を欲してしまう浅はかな私を知ったら、彼はどう思うだろうか。引いてしまうのだろうか。それとも私に同意してくれるだろうか。この気持ちが、彼にもあるとするならば。本能のまま私を欲する彼……。そうだと良いな。むしろ、そうであって欲しい。きっと、そうなのだろう。