第1章 熱
体は火照っているとは言え、少し肌寒い空気に小さな身震いをしながら、彼の顔を伺ってみる。予想通り、彼の視線は私の体を行ったり来たりと忙しい。下はパジャマを履かず、繊細なレースであしらわれた白いパンティーだけの今の私の姿は、さぞかし淫乱なのだろう。何度も体を重ねた関係とは言え、じっくりと見られるのはやはり慣れない。羞恥で堪らず両腕で己の体を抱きしめるように隠してしまった。
そんな私を見て、彼はクスリッと笑う。悪かった、と謝る気のない音色で一言告げれば、彼は己の服を脱ぎだす。風呂上がりだった彼も身に付けているものが少なく、Tシャツとスエットパンツを床に放れば、私と同じように下着一枚の姿になった。
さすが日頃から鍛えているだけあって、彼の体は引き締まっている。仕事で体をよく使うためか、薄暗い中でもはっきりと見える胸筋と腹筋は立派だった。そして同様に逞しい腕にこれから包まれるのだと思うと、何だか世の女性を全て敵に回すほどの幸せを手に入れたかのように思える。風呂から出たばかりと言うのもあるのだろう。彼の肌は少し湿ったような質感を持っている。それが彼の色気を増やすのだから質が悪い。