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グール
第3章 しょうか
ある友人は言った。
「それ、食ったものの味を覚えてるシェフみてえ」
舌触り。
口中に満ち、鼻に抜ける香気。
噛み砕いたときの感触、そして味の子細。
最後に食道を滑り降り胸に落ち、飲み込んだものが認識ができなくなるあの瞬間。
驚くことに世間には、それらを覚えていられる人間がいるという。
なるほど、と腑に落ちた。
どうやら私は、あの猫の死を食べてしまったようだった。
ものにした、とでも言うべきか。
猫の死体は思い出でなく、私の腹で生きているらしい。
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