第2章 えんげ
今でもたまに、はっきりと思い出すのだ。
たとえば、女子高生の白い足に、青く血管が浮かんでしまっているのを見た時とか。
たとえば、ふと自分の胸元を見ると、服が心臓の鼓動にあわせて揺れているのに気づいたときとか。
猫はまだ、私の思い出の中で生きている。
片目であらぬ方を、もう片目で私をまっすぐ見つめた姿で、死体のままで、生きている。
そのときの空気のにおいすら、はっきり思い出せる。
猫の死体を撫でられなかった落胆も、先生が口を酸っぱくしていう「命」の呆気なさに対する失望も、それを知られた高揚も、あの時のままで私の中にある。