第1章 ++ガラスの青い鳥++
意志があって、言葉が言えて、生きている。
『オレは大人達の操り人形じゃない…このままだとオレは自分を見失って死ぬかも知れない』
だからオレ、飛び出そうと思う。
お前ならオレの気持ち分かってくれるだろ?なぁ──
「……ちょっと、そこのお兄さん」
「えっ?」
回想の中の親友の呼びかけが、鈴の音のような可憐な声にかき消されて一気に現実に引き戻された。
シャムロックが声の聞こえた方を見てみると、木陰に陣取って大きな風呂敷を広げている少女が、不機嫌そうな顔で彼を睨みつけていた。
「商売の邪魔なんだけど」
「ごめんよ、考え事をしていて」
謝りながら、思考に足が止まって周りが見えなくなるとは騎士として情けないことだとシャムロックは落ち込む。
しかし気を取り直すと、少女の前に広がる色とりどりの品物を興味深そうに覗き込んだ。
「これは宝石かい?」
「あなた、馬鹿じゃないの?」
そんな高価な物を、私みたいな小娘が開けっぴろげに売りさばくと思うわけ?