第1章 ++ガラスの青い鳥++
季節は風薫る春。
空は突き抜けるほどの晴天。
有能な騎士を輩出してきたトライドラの砦から、今年も優秀な新米騎士が選出された。
その筆頭、真新しい白の鎧に身を包む青年シャムロック。
彼は、叙勲された輝かしい栄誉とは裏腹な暗い表情で城門をくぐった。
「よりによって王子を連れ戻せとは…」
頭を悩ませるのは、本日下された──騎士になって初の任務内容である。
聖王国の第一王子で次期国王になるべく育てられてきた青年が、ここのところ放浪癖を悪化させて王都にも寄りつかなくなったらしい。
そこで貧乏くじ…もとい、矢面が立ったのは王子と親交を許されていたシャムロックだった。
シャムロックに王子の護衛とお目付の役を与えて、王子を正しい軌道に引き戻そうという大臣たちの思惑。
二人の友情につけ込む大人の都合に、さすがのシャムロックも辟易していた。
「フォルテ様は、わたしの話を聴いてくれるだろうか…」
いつかの晩、深酒をした王子が、やけに真剣な眼差しで言っていた言葉を思い出す。
『オレは、カゴの中の鳥じゃない』