第1章 ++ガラスの青い鳥++
「フォルテ様!?」
「馬鹿やろう、声がデカいっつーの」
帽子を目深に被り変装をしている風の王子が、周囲に気を配りながらシャムロックに近付いてきた。
「どうしてこちらに?」
「いやな、親友の騎士勲章を祝ってやろうと思って」
そう言って、酒瓶を掲げて満面の笑みを浮かべる青年にシャムロックは苦笑するしかない。
どうやらこの御方は、出奔しているというご自分の立場も、周りの心配もわかっちゃいないようだ。
でも自分の気持ちに正直で、雲のように奔放な有り様が少し──羨ましかったりもする。
「ん?お前何持ってるんだ?」
呆れたように笑う親友の手の中に光るガラス細工。
それは細部までよく表現された青い小鳥。
「そうだ──あれ、あの子は…?」
思い出して慌てて振り向いても、少女の姿がない。
それどころかたくさんあった極彩色の品々も、綺麗さっぱり消えている。
「おかしいな…ねぇ、フォルテ様?ここに女の子が居ましたよね?」
親友の言葉に、フォルテは訝しむ表情を浮かべた。