第23章 季節外れの蝉
"…ン…ミーン…"
微かに遠くから蝉の鳴き声が聞こえた。
るり「!!!青峰くん!」
青峰「おう!」
私と青峰くんは鳴き声のしたほうへと走った。
そこには一匹の蝉がいた。
るり「いたぁ!仲間がいたよ!セミオ!」
私は虫かごのセミオを見た。
青峰「おっし、じゃぁ、ご対面させてやるか。」
青峰くんはセミオをそっと掴むと
鳴いている蝉の近くに置いた。
すると、先ほどまで静かにしていたセミオが再び元気いっぱいに鳴き始めた。
二匹は競うように鳴き始めた。
るり「へへ。女の子じゃなくてごめんね。セミオ」
青峰「いいんじゃねぇの?ライバル見つかって楽しそうじゃん」
そういう青峰くんの顔は少し寂しそうにみえた。
るり「…そうだね。もしかしたら二匹は出会ってなかったのかもしれないもんね。」
青峰「・・・。」
しばらくするとセミオともう一匹の蝉は二匹で同じ方向へ飛び立って行った。
それから私達は公園を後にした。
るり「私達もあの子達と一緒でもしかしたら出会ってなかったのかもしれないね。」
青峰「あ?何急にくせぇ事言ってんだよ。」
るり「でも、運命ってそういうもんじゃない?ボタンの掛け違いみたいにさ。きっと私達が出会わない運命もあったと思うんだよね。」
青峰「…仮にもし、お前と出会わない運命があったとしても」
るり「ん?」
青峰「それでも俺は、その運命に逆らってでもお前に会いに行くよ。」
ふと青峰くんの顔を見ると
青峰くんは静かに笑っていた。
るり「…え?それどういう意味?」
青峰「あぁ!?うっせぇよ!なんでもねぇよ!///」
青峰くんは何故か顔を真っ赤にしていた。
『鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす。』
どんな意味なのかな。