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時の贈り物*[幽遊白書]*

第11章 不安


そんなある日のこと。

もうすぐある定期テストに向けて勉強しているとき、母さんがオレに差し入れを持ってきてくれた。

南野秀一の母・志保利。
オレの人間界での仮の母親。

魔界で盗賊だったオレは、十五年前強力な霊界の特防隊(ハンター)にかなりの深手をおわされた。
そして、霊体の状態で人間界へ駆け込み、人間の受精体に憑依して、いまのオレが生まれた。

志保利「秀一、勉強はかどってる?」

「うん、ありがとう母さん」

幼馴染みでもある時音は母さんとも仲が良く、前はよく家に遊びに来ていた。
しかし今は、それもめっきり無くなった。

志保利「秀一…何かあったの?」

「え?」

考え事をしていると、母さんが不安そうな顔でオレを見る。

志保利「ここのところ、時音ちゃん家に来ないようになったでしょ?
時音ちゃんとケンカでもしたのかと思って…」

「うん…まぁ、色々と……」

何と応えていいか解らず、曖昧な返事をする。

母さんはオレの部屋のベッドに腰かけると、ゆっくりとオレに問うた。

志保利「秀一…時音ちゃんのこと、どう想ってるの?」

「…え」

いきなりの質問に目を丸くする。
だがすぐに返答した。

「…好きだよ。…一人の女性として」

志保利「そっか。……時音ちゃん心配してたわよ?」

「え、心配?」

志保利「去年の十月頃だったかしら、『相談があって』って家に来たの」

「時音が…」

家に来ていたなんて…。

志保利「それでね、『秀一に嫌われたかもしれない』って…そのまま泣き出しちゃったの」

「……」

時音…。

志保利「秀一、時音ちゃんのこと好きなら泣かしちゃダメよ?
あなたにとって時音ちゃんは"特別"なんだって、母さん思うの。
だからちゃんと気持ちを伝えないと、後で絶対後悔するわ」

その時……

「!!」

何処からか強い妖気を感じた。

かなり強い妖気だ。

「母さん、オレ…」

志保利「時音ちゃんのとこ、行ってきてあげて」

「…うん」

オレはそのまま家を出た。

きっと時音もその妖気に気づいているはずだ。

だからその時伝えよう……オレの想いを……

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