第11章 不安
~蔵馬side~
八つ手の事件から一ヶ月が経った。
喜多島から八つ手に襲われた記憶とオレへの想いを消し、彼女はいつも通り普通の生活をしている。
安心したが、もう一つの不安があった……。
時音だ。
あの夜の次の日、朝学校へ行くため家を出たら丁度時音と会った。
オレは気まずさに何と声を掛けたらいいのか戸惑っていると、彼女は「おはよう」と言ってきた。
しかも…笑顔で…。
登下校も前のように一緒になって、まるで何事もなかったかのような日々が続いていた。
ーーーーーーオレは、どうすればいいんだ……
自分も時音に気持ちを伝えればいいのか、それとも彼女のためだからこそ…今のままの関係でいいのか…。
考えれば考える程時間が経っていき、気づいたら一ヶ月もの月日が経っていたというわけだ。