第10章 醜い自分
桜音「私はね、何事にも努力を惜しまず、責任感が強くて人を大切に想いやる心をもっているあなたのような娘をとても誇りに思います。
負けず嫌いなあなたの性格がいまのあなたを作り上げたと言っても過言ではないでしょう。
負けることが嫌いなあなたは、何事にも逃げ出したりしなかった。
それが例え、命を掛けた勝負でもそうでなくても…
でもあなたは、自分の勝負には背を向けているの」
「自分の…勝負…」
桜音「…恋愛だってライバルがいれば勝負と同じなのです。
どれだけ自分と同じ想い人が沢山いても、背を向けてはダメ。
自分が身を退くことで、その人が必ず幸せになるとは限らないのですよ。
結局ね、幸せとは自分で掴むものなのです。
どんなに辛くて苦しい時でも、その想いの先に本当の幸せがあるのです」
「本当の…幸せ…」
桜音「だからここで諦めないで、時音。
本当に蔵馬のことを愛しているなら尚更です。
この人間界で過ごした時間は決してムダにはならない」
「お母様…」
あぁ…やっぱりお母様はすごい…。
そのお母様の言葉が何よりも嬉しい。
「ありがとうございます…」
私が静かにそう言うと、お母様はニコッと微笑んでくれた。
不安だけど…また、少しずつ…。
蔵馬のことが好きという感覚を感じながら、そんな決意を固めた。