第10章 醜い自分
~時音side~
蔵馬と別れた後、全力で家に向かって走った。
自分の想いはしっかりと伝えた。
蔵馬にフラれることがわかっていても"好き"という気持ちはちゃんと言葉にできた。だからもう……
"悔いはない"
その言葉がどうしても出せなかった。
蔵馬の幸せのために、自分の身を退いた私……。
だけど本当は…本当は、私の隣にいてほしい。
私だけの男(ひと)であってほしい。
そんな欲が、心の中で渦巻く。
「……私って、こんなに醜かったんだ……」
知らなかった。自分の心がこんなにも汚なかったなんて……。
秀一と麻弥が仲良く話す姿を見る度に、いつも心の中が黒くてドロドロしたものでいっぱいになっていた。
"嫉妬"
それだけが、私の心の中に募っていく。
「もう……こんな自分なんて見たくないっ!!」
自分で決めたことなのに、後悔している自分自身が馬鹿馬鹿しい。
私はなんで、あの人のことを好きになったんだろう……
愛してしまったんだろう……
今更そんな疑問を抱く自分も、嫉妬する醜い自分も、後悔する自分も…全て許せない!大嫌いだ!