第6章 最悪の事態
~蔵馬side~
あの後、倒れた彼を連れて家に帰り、怪我の手当てをした。
今はベッドで寝かせている。
得体の知らないヤツを家へ入れるなんて、妖狐時代のオレには考えられないが……。
そんな懐かしいことを考えていると、ふと頭に一匹の妖怪の姿が浮かんだ。
透き通った白い肌と、大きな水色の瞳。ほんのりと桜色に色づいた唇に整った顔立ちをしている。
腰以上もある長い漆黒の髪で、少しだけ頬にかかる髪の部分は顎のラインで切り揃えられ、残りの横髪は後ろの長さと同じ。
そして、白面金毛の九本の尻尾と狐の耳。
鈴の音のようにおしとやかで優しい声をした、美しい九尾の狐。
彼女はオレが初めて愛した女。
時音