第34章 不吉の予兆
化け物が!さっさと国から出ていけ!!
そんな冷たい言葉が周りから降りかかってきました。
彼女はその言葉を耳に流しながら、思ったのです。
妖怪が化け物?なら人間は?
私はただこの人を、人間を、国を守るために戦っただけなのに、何故そのような言葉を投げ掛けられるの?
人間だって妖怪と変わらない、残酷な生き物よ。
妖怪だって、悪い者ばかりじゃない。
なのに、どうして全ての妖怪が悪者だと決めつけるの?
ねぇ、どうして貴方は…私を愛してもなお、私を恨んでいるのですか。
彼女にとって、その事実が一番悲しかった。苦しかった。辛かった。
そして、人間も私達と同じ化け物だ。
それから彼女は、とても恐ろしい妖怪へと豹変しました。人間の残酷な心を直接浴びてから。
しかしそれでも彼女は、あの男を愛していたのです。
男も彼女を守るために、己の命を己で断ち切ったのだから。
これは一人の人間の男と、一匹の妖怪の女との悲しい悲しい愛の物語。