第1章 1
「はい、これで良し!」
「わぁー!余語さん、ありがとう!すごくピッカピカ!楽器も嬉しそうだよ!」
音也くんが嬉しそうに指板をなぞる。
「でしょー?僕は意外とすごいんだよ?…あ、でもメンテナンスのために弦切っちゃったから、ついでに取り替えてもいいかな?」
「あ、いや、…いまお金ないからそれくらいは自分でやります…ハハ…」
駆け出しアイドルっていうのはなかなかつらそうだ。
ここなら涼子ちゃんも見えてないみたいだし、僕はある提案をする。
「音也くん、僕がそんなにお金にうるさい人に見える?涼子ちゃんじゃないんだから、そのくらいはサービスしちゃうよ?」
そう耳打ちすると、音也くんは豆鉄砲を食らったような顔を向けた。
素直でいい子だ。こんな子ならいくらでもサービスしてあげたくなってしまう。
「へ、ほ、ほんとですか!?やったー!」
「シーッ!涼子ちゃんに聞こえちゃうから!」
「あぁぁ…ごめんなさい…」
元気のいい音也くんとそんなやり取りをしていると、華やかな声がカウンターから僕を呼んだ。
「余語さん!」
「うん?レンくん、どうかした?」
リペア台からカウンターに顔をのぞかせると、ゆったりとイスでくつろぐレンくんがみえた。