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触れてみたかったから(うたプリ)

第1章 1


ゴールデンウィーク最終日。
けだるい昼下がり。

カランカラン…

「いらっしゃいませ」
「やぁ、子羊ちゃん」
「じ…神宮寺レン…」

先ほど届いた商品の山に、ハンドラベラーで値札を付ける作業をしている最中、常連客がやってきた。

名は神宮寺レン。話題沸騰中のST☆RISHのメンバーである。

「やあ、レンくん。いらっしゃい。ゆっくりみてってね」
「余語さん、こんにちは。ありがとうございます」

神宮寺レンは奥から出てきた店長に、にこやかな笑顔を振りまいた。

「やっぱオーラが違うねぇ…ほら、涼子ちゃん、そんなとこで作業してないで接客してさしあげて」
「…はーい」

ちょうどすべての商品に値札を付け終えたので、ハンドラベラーを棚にしまい補充分のいくつかのリードの箱と、新入荷のリードの箱を手近にあったカゴに突っ込み、それを持ってレジ前で待っている神宮寺レンの元へ向かった。

「どーも、いつもありがとうございます神宮寺レンさん飽きませんか?」

ぶっきらぼうな声が出る。

「今日も子羊ちゃんがお相手してくれるのかい?」

ここ最近毎日ウチの店に通い詰めている神宮寺レンという人間は、俗にいうフェミニストというタイプだった。
そのような扱いが苦手なので、出来れば避けて通りたい接客なのだが、あいにくこの小さな店で管楽器やヴァイオリン属の知識を専門的に持っているのは私一人だけ。
故にサックスを吹く神宮寺レンは私の上得意様だ。逃げることは出来ない。

「あなたは私のお客様ですから。本日はなにを探しに来たんですか?…子羊ちゃんの顔を見に来た、とかくだらない用事だったらさっさと帰っていただきますから」

ここは大きな豪邸のようなマンションが目立つ住宅街のそばにある商店街。
その北の端に構える、某大型楽器店のフランチャイズ店だ。
何の変哲もない普通の楽器屋だが、1つだけ、他の楽器屋にはない特徴がある。

アイドル御用達なのだ。
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