第1章 お前しか[坂田銀時]
銀時と会わなくなってもう随分たった。なのに、昔と変わらない出で立ちで銀時はそこにいた。
「急にどうしたんだよ、香蓮。会いたいって。」
「伝えなきゃいけないことがあるの。」
「なんだよ、告白か?」
「そうだとよかったのにね…。」
場に暗い空気が漂う。これから、暗い話をするのだから仕方ないけど、やっぱり言いづらい。こんな重大な事を大事な人に伝えるなんて。耐えられそうになかった。
「私ね、労咳なの。だから、もう…先は長くない。今日はその挨拶に来たの。私の体はいつ消えてもおかしくないから。」
銀時は黙ったまま、顔を下に向けた。私だってもっと長く生きていたい。けれど、体がそれを許さないなら従うしかない。日に日にやつれていってその内、ご飯も食べなくなって、死がやって来る。
「いつからだ?労咳だってわかったの。」
「2ヶ月前くらいかな。」
「…どうしてもっと早く言わなかった?」
「言ったって状況が変わるわけじゃない。それなら、なんの意味もない。人はどうせ死ぬんだから、それが早いか遅いかの違い。」
そう。人間なら誰にでも訪れる死。これには抗えないのだから、受け入れるしかない。