第10章 今は別で
任務帰り、脹相は五条に呼び止められた。
「脹相、ちょっといい?」
「……何だ」
五条はいつもの軽い調子を少しだけ抑え、俺を人のいない場所へ連れていった。
「実はさ、あの子が誰かにつけられてる可能性があるんだよね」
「……何?」
脹相の表情が険しくなる。
「まだ確証はない。でも、念のためしばらく別々に暮らしてほしい。君は僕ん家、あの子は今までどおり自宅でって思うんだけど」
「……しばらくとは、いつまでだ」
「誰が探ってるのか分かるまで、かな」
脹相は唇を引き結んだ。
離れたくはない。だが、彼女を危険に巻き込むわけにもいかなかった。
「……分かった」
その夜、脹相は彼女にメッセージを送った。
『しばらく五条家で過ごすことになった。急ですまない』
少しして、返信が届く。
『そっか。仕方がないね。寂しいけど、脹相が安全なところにいてくれるなら安心だよ』
続けて、もう一通。
『大丈夫! また一緒に暮らせるようになるまで、頑張ろうね』
画面を見つめ、脹相は小さく息を吐いた。
本当は、寂しい思いをさせていることが何よりつらかった。
それでも、彼女は自分を励ましてくれる。
『……ああ。必ず戻る』
そう返信して、脹相はスマートフォンを胸元に抱き寄せた。
今は離れていても、必ずまた一緒に暮らす。
その約束だけは、何があっても守ろうと思った。
『会えるときに会いにいくよ』
彼女からのメッセージは、いつもどおり明るかった。
……寂しくないはずがないのに。
俺を責めるどころか、安心させようとしてくれる。その優しさが嬉しくて、少しだけ胸が痛んだ。