第1章 その胡蝶、閨の教育係にて
「はぁぁぁぁぁ───···」
帝の王弟である壬氏は、寝所にて腹の底から大きなため息を吐いた。
もう刻は等に日付を越えようとしている。
寝台に腰をかけ、整ったかんばせには、不機嫌そうにも綺麗な眉が額に寄せられていた。
何故、壬氏がこんなにも苦虫を噛み潰したような表情を浮かべているかと言えば、先程兄の帝と酒を飲み交わした時に話された言葉だった。
「お前ももういい歳だ。そろそろ落ち着いてはどうだ」と。
ただでさえ忙しいのに、言ってくれた物である。
王弟で無ければ、今頃は自分とて等に妻を娶り子を成していてもおかしくはない。
しかし、自分は王弟であり後宮を任されている身であり、そうほいほいと簡単に身を落ち着けている場合ではないのだと。
「それに─」と、帝が続ける。
いくら宦官の真似事と言えども、男性機能の効能を弱める薬を飲んでいては、やがて本当に不能になるのでは···と、心配されてしまう始末である。
「そうだ···、極秘でお前には閨教育係をよこそう」
「はっ!?ゲホゲホッ!!」
帝の提案に、壬氏は酒を違う場所へと飲み込んで噎せた。
(閨、教育係···!?この私に、か!?)
しかもこのまま行けば、不能になると思われている。
解せぬ世話に壬氏は帝を内心恨んだ。
「何、案ずる事は無い。お前もよく知る人物よ」
「いや、ちょ、···ゲホゲホ!」
「だ。良き姫に成長したものだぞ」
帝と言えば、前帝とは違い豊かな乳房を好む。
と、言う事は···。
「アレはいい女に成長した。壬氏もさぞ気に入ってくれると私は思っている」
まさかの押し付けである。