第2章 雄英高校入学編
雄英高校
放課後
人の気配が少なくなった廊下を、彼女は一人で歩いていた。
「少し、いいかな」
背後から声をかけられる。
振り返る。
「オールマイト?」
「うむ」
普段の豪快な笑顔とは違う。
少しだけ、真剣な表情だった。
「話したいことがあるんだ」
「……分かりました」
二人は、誰もいない空き教室へ入った。
扉が閉まる。
彼女は椅子に座り、オールマイトを見る。
「それで?」
オールマイトは少し迷ってから口を開いた。
「緑谷出久という少年についてだ」
彼女の目が僅かに動く。
「緑谷くん?」
「ああ」
オールマイトは、緑谷との出会い。
彼が持つ可能性。
そして、自分が彼に力を託したことを話した。
彼女は黙って聞いていた。
途中で口を挟むことはない。
ただ、話の内容を一つずつ頭の中で整理していく。
「……なるほど」
「彼はまだ、自分の力を上手く扱えていない」
「…でしょうね」
「だから、もし何かあったら……」
オールマイトは少しだけ身を乗り出す。
「君にも、力になってほしい」
彼女は黙った。
数秒。
「……考えておきますね」
それだけだった。
「え?」
「オールマイト、私は公安の人間ですよ」
淡々とした声。
「緑谷くんのことを気にかけるあまり、任務に支障が出れば、潜入捜査そのものが続行できなくなります」
「それは……」
「分かってください」
彼女は立ち上がった。
そして一度だけ、小さく肩を落とすオールマイトを見る。
彼女はため息を一ついた後、
「…考えておきます」
「……うん。よろしく頼むよ」
彼女はそのまま部屋を出ていった。
扉が閉まる。
オールマイトは、一人残された教室で小さく息を吐いた。
「……考えておく、か」
その言葉が、妙に寂しく聞こえた。