第16章 雄英文化祭編
「それで?ママはどうだったの?」
母親が尋ねると、双子はぱっと顔を輝かせた。
「ママもとっても可愛かった!」
「うん!すっごく可愛かった!」
「……まあ」
今度は、母親が少し驚いた顔をする。
「今のママも可愛いけど、今日のママは、なんか……もっと可愛かった!」
「そうそう!キラキラしてた!」
「それに、パパ、ずっとママのこと見てた!」
「えっ?」
母親は目を丸くした。
長男も、思い出したように頷く。
「うん。パパ、ママのこと見てたよ」
「……あら、そうなの?」
彼女は、ほんの少しだけ頬を緩めた。
まだ自分たちの未来を知らない、あの頃の彼。
きっと、突然現れた三人の男の子と一人の赤ん坊に、戸惑っていたに違いない。
それでも、あの子たちが自分へ向けていた眼差しを思い返すと、胸の奥が温かくなる。
「それは良かったわ」
母親は、ほほえましそうに笑った。
その横顔を、長男はじっと見つめていた。
いつも家で見る母親の笑顔。
自分たちが転んだとき、泣いたとき、喧嘩をしたとき。どんなときでも、最後にはこうして優しく笑ってくれる。
けれど、長男は知っていた。
ママがパパのことを大好きだということを。
パパも、ママのことが大好きだということを。
普段はぶっきらぼうで、素直に愛情を表現するのが苦手な父親。それでも、母親が笑っていれば少しだけ機嫌が良くなり、疲れていれば誰よりも早く気づいて、何も言わずに支えている。
そんな二人を、長男はずっと見てきた。
だからこそ。
今日、若い二人に会えたことが、何よりも嬉しかった。
「……ねえ、ママ」
「なあに?」
長男は、少しだけ照れくさそうに母親を見上げた。
「帰ったら、パパにも今日のこと、早く話してあげたい」
母親は一瞬、目を丸くした。
それから、ふわりと微笑む。
「そうね。パパ、きっとびっくりするでしょうね」
「うん!だって、パパ、すっごく若かったんだよ!」
「ふふっ。そんなに何度も言ったら、パパが拗ねちゃうかもしれないわ」
「パパ、すねるの?」
「ええ。あなたたちが思っているより、ずっとね」
母親がいたずらっぽく目を細めると、長男もつられて笑った。
彼女は歩みを止め、長男の頭にそっと手を置いた。
柔らかな髪を、優しく撫でる。