• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

光の裏側で、君と ※ヒロアカの爆豪寄り

第16章 雄英文化祭編


「……あの」

かすれそうな声。

おもちは、黙って少女の目を見つめ返した。

エリの唇が、わずかに震える。

そして、ふたりにしか聞こえないほど小さな声で、問いかけた。

「……ステラおねえちゃん、ですか?」

その瞬間。
おもちの胸の奥に、鋭い痛みが走った。


――どうして。
どうして、分かったのだろう。
姿は違う。
髪の色も違う。
声だって、あの時とは少し違うはずなのに。

それでも、この子は自分を見つけてくれた。
目の前の少女は、答えを急かすこともなく、ただ不安そうに彼女を見上げている。


もし、ここで否定したら。
「違うよ」と笑ってしまったら。

この子は、どう思うだろう。

自分がようやく信じられるようになった相手を、また失ったと思うのではないだろうか。


せっかく差し出してくれた小さな手を、今度こそ離してしまうのではないだろうか。

おもちは、困ったように眉を下げた。

ほんの一瞬、迷いがよぎる。
公安の人間としてなら、否定するのが正解なのかもしれない。



今の自分は、雄英高校に潜入している身だ。
正体を明かすことには、危険も伴う。
けれど。
目の前にいるのは、任務の対象ではなかった。
救いたいと願い、手を伸ばした、大切な少女だった。


おもちは、そっと膝を折った。

エリと同じ目線になる。

そして、その顔を覗き込むようにして、微笑んだ。

それは、いつものクラスメイトたちに向ける、明るく穏やかな笑みとは違っていた。



もっと柔らかく。
もっと深く。
冷え切った子どもの心を包み込むような、うっとりするほど美しい笑顔。


あの日、怯えるエリを安心させた、あの笑顔だった。



「……見つかっちゃったかぁ」


まるで、秘密を見つけられたことを困ったように笑う声。
その言葉を聞いた瞬間、エリの瞳が大きく見開かれた。



「……っ!」

次の瞬間。
エリは、彼女の胸へ飛び込んだ。


「ステラおねえちゃん……っ!」


小さな腕が、ぎゅっと彼女の身体に回される。
まるで、もう二度と離さないとでもいうように。
/ 817ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp