第15章 死穢八齋會
同時に、決意のようなものが生まれていた。
いつか。
いつか、彼女が泣きたくなった時。
オールマイトの腕の中ではなく。
誰かに慰めてもらうためでもなく。
自分のところへ来てくれたらいい。
自分にだけは、無理に笑わずにいてくれたらいい。
そんな未来を、勝手に思い描いてしまった。
「…………」
しばらくして、彼女の涙が少しずつ落ち着いてきた。
オールマイトの胸元から顔を上げると、彼女は濡れた頬を指先で拭った。
「……ごめんなさい」
「謝る必要はない」
オールマイトは即座に答えた。
「君が泣くことの、何が悪いんだい?」
「……でも」
「でも、じゃない」
いつになく強い口調だった。
彼女は少し驚いたように瞬きをする。
オールマイトは、優しく微笑んだ。
「君がずっと我慢してきたことを、私は知らなかった。だからこそ、これからは少しずつでもいい。私にも、彼らにも、頼ってほしい」
彼女は、二人の少年へ視線を向けた。
緑谷は、心配そうに彼女を見つめている。
爆豪は相変わらず不機嫌そうな顔をしていたが、その視線には、隠しきれない気遣いがあった。
「……緑谷くん」
「は、はい!」
突然名前を呼ばれ、緑谷は背筋を伸ばした。
「……爆豪くんも」
「……何だよ」
彼女は、涙の残る目を細めた。
そして。
今度こそ、笑った。
誰かを安心させるための笑顔ではない。
何もなかったことにするための笑顔でもない。
胸の奥から、自然にこぼれた笑顔だった。
柔らかく、少しだけ照れくさそうで。
それでも、確かな温かさを宿した笑顔。
「……ありがとう」
たった一言。
けれど、その言葉には、今まで彼女が口にできなかった気持ちが込められていた。
秘密を知っても、離れないでいてくれてありがとう。
自分の選択を、頭ごなしに否定しないでくれてありがとう。
一人で抱え込まなくてもいいのだと、教えてくれてありがとう。
そして。
こんな自分でも、ここにいていいのだと、思わせてくれてありがとう。