第10章 神野区の悪夢編
黄金の光が戦場を照らす中、倒れていたオールマイトが、かすかに身じろぎした。
「……待て……」
血に濡れた手が、瓦礫をつかむ。
誰もが息を呑む中、オールマイトは震える身体を無理やり起こした。痩せ細った肉体は限界を迎え、立ち上がることさえ困難なはずだった。それでも彼は、ゆっくりと立ち上がった。
そして、おもちとオール・フォー・ワンの間に立ちはだかった。
「オールマイト……!」
彼女の瞳が揺れる。
「下がっていろ、おもち」
その声はかすれていた。呼吸も乱れ、今にも膝をつきそうなほどに消耗している。それでも、彼は彼女を背にかばい、宿敵を真っ直ぐに見据えた。
「彼女は……私の生徒だ」
オールマイトの拳が、ぎゅっと握られる。
「……っ」
彼女の喉が詰まった。
その言葉が、胸の奥に深く突き刺さる。
「この子を守るのは、私の役目だ」
オールマイトは一歩、前へ出た。
「君に彼女を傷つけさせるわけにはいかない。どれほど私が傷つこうとも、どれほどこの身体が限界を迎えようとも……それだけは、譲れない!」
声を張り上げた瞬間、彼の身体が大きく揺れた。
それでも彼は倒れなかった。
かつて平和の象徴と呼ばれた男が、残されたわずかな力を振り絞り、再び立ち上がっていた。
それは、ヒーローとしての意地だけではない。
目の前の者を守りたいという、一人の人間としての願いだった。
おもちは、彼の背中を見つめた。
もう十分だった。
自分のために、これ以上傷ついてほしくない。
大切な人が命を削って戦う姿を、ただ見ているだけの自分には戻りたくなかった。
「……オールマイト」
彼女は小さく呼びかける。
「ありがとう」