第7章 期末テスト編
その顔には、明らかに意地の悪い笑みが浮かんでいた。
「……ただし」
五人の動きが止まる。
「合宿で補習をやる」
「…………は?」
相澤の笑みが、さらに深くなった。
「お前らは赤点を取った。つまり、必要な能力が足りていないということだ。合宿中に、そこを徹底的に鍛え直す」
「ええええええええっ!?」
再び教室に絶叫が響き渡った。
「ちょっと待ってください! 合宿って、訓練するためのものですよね!?」
「だから補習もするんだろうが」
「いや、そういうことじゃなくて!」
上鳴が頭を抱える。
芦戸も机に突っ伏した。
「うそでしょ……。せっかくの林間合宿なのに……!」
「遊びに行くわけじゃねぇぞ」
相澤は容赦なく言い放った。
「それに、合宿までに浮かれてる暇があるなら、今のうちから復習しておけ。筆記は全員クリアしたとはいえ、油断するなよ」
「「「はい……」」」
五人の声が、みるみる小さくなった。
その様子に、教室のあちこちから苦笑が漏れる。
「先生、やっぱり容赦ないな……」
緑谷が小声で呟いた。
「いつものことだろ」
爆豪が鼻を鳴らす。
彼女は相澤の笑みを見つめながら、内心で納得していた。
合宿への参加を認めることで、まずは生徒たちを安心させる。
その直後に補習を告げ、気を緩める余地をなくす。
生徒の反応まで見越した、実に効率的なやり方だった。
「……先生、性格が悪いですね」
彼女が小さく呟くと、爆豪が吹き出しかけた。
「ぶっ……!」
「おい、聞こえてんぞ」
相澤の視線が飛んでくる。
彼女はすぐに姿勢を正した。
「いえ。とても合理的な指導だと思います」
「今さら取り繕っても遅ぇよ」
教室に笑いが広がる。
相澤は深いため息をつき、出席簿を閉じた。
「とにかく、期末試験はこれで終了だ。林間合宿に向けて、各自準備を進めておけ。詳細は後日伝える」
その言葉を最後に、教室の空気は一気に夏休みへと傾いていった。
林間合宿。
いつもとは違う環境での訓練。
クラスメイトたちの期待と不安が入り混じる中、彼女は静かに窓の外へ目を向けた。
個性が戻る時期は、まだ分からない。
それでも、今回の実技試験で一つだけ分かったことがある。
自分一人では突破できない状況でも、誰かと力を合わせれば道は開ける。