第4章 雄英体育祭編
テレビカメラが、彼女を捉えていた。
会場の大型スクリーンに、彼女の顔が大きく映し出される。
「……?」
本人は何が起きたのか分からず、スクリーンを見上げた。
そこに映っているのは、自分。
「…………」
彼女が、困ったように瞬きをする。
観客席が大きくざわめいた。
「誰?」
「1-Aの子?」
「めちゃくちゃ綺麗じゃない?」
「モデルみたい……!」
「すごい美人……!」
カメラが彼女を捉えた理由は、単純に容姿だけではなかった。
中継スタッフにとって、彼女は――
「画になる」。
それだけで十分な存在だった。
整った容姿。
落ち着いた表情。
他の生徒とは違う、どこか大人びた雰囲気。
そして何より、先ほどの障害物競走で見せた、異質な個性の使い方。
ロボットを利用し、岩壁を飛び越え、最後には、地雷原そのものを支配した。
「……あの子、また映して」
中継席のスタッフがモニターを見ながら呟く。
「1-Aの、さっきの子?」
「そう。今、観客の反応がいい」
別のスタッフが視聴率モニターを確認する。
「さっき地雷原を抜けたところから、SNSの反応も増えてる」
「USJの時にも映ってた子だよな?」
「たぶん。映像資料、確認して」
「了解」
スタッフたちは、彼女を一人の「生徒」としてではなく――
全国中継の中で視聴者を引きつける、一つの「画」として見始めていた。
「それに、4位っていうのもいい」
「1位じゃないのが?」
「そう。トップ争いだけなら、緑谷・爆豪・轟を追えばいい。でも、この子は違う」
「……確かに」
「何をするか分からない。個性もまだ情報が少ない。しかも本人が妙に落ち着いてる」
スタッフがモニターに映る彼女を見る。
「視聴者が『この子、何者?』って思うタイプだよ」
「なるほど」
「だから、追える時は追って」
「了解」
カメラが、再び彼女を捉える。
彼女が歩けば、レンズも動く。
横顔を映す。
足を止めた姿を映す。
大型スクリーンに映った自分を見上げる、その困惑した表情まで――
すべてが全国へ流れていく。
彼女は、なぜ自分ばかり映されているのか分からない。
(……何?)
そんな疑問を抱えたまま、また一歩歩く。
カメラも追う。
彼女が振り返る。
カメラも寄る。
本人の意思とは無関係に。
その存在そのものが、画面の中で目を引いていた。
