第8章 谷雨
——そして、翌日の朝。
教室での朝の会。教壇に立った五条先生は、ニコニコと笑いながら、とんでもないことを言い放った。
「はーいみんな!天気も良いし、今日の授業は急遽 “課外授業” に変更でーす!早速、今から車で公園に遊びに行くよ!」
「は? 授業潰して公園? 意味分かんねぇんだけど」
「しゃけ」
真希さんや棘さんが呆れる中、私は内心、すごく動揺していた。
昨日の夜、隣の部屋で皐月さんから「用が済んだらさっさと部屋に戻り、静かに過ごすこと」と冷たく言い渡された言葉が、頭をよぎったからだ。
『あの……私は、高専からあまり出たらダメだし……なんなら部屋で大人しく過ごしていなければいけないので、その……』
私が小さく俯きながら『いや……』と言い淀むと、教室の空気がガラリと温かいものに変わった。
「何言ってんだよ。部屋にこもって暗い顔してるより、外の空気吸った方が身体に良いに決まってんだろ。行くぞ、雫」
「そうだぞ! 息抜きは大事だ」
真希さんやパンダさんが、当たり前のように私の背中を押してくれる。
「……五月雨さん。僕も、一緒に行ってほしいな。……ダメ、かな?」
前の席の憂太さんまで、そんな優しくて少しずるい笑顔で私を見つめてくる。みんながこれだけ私のために賛成してくれているのだ。断るのが申し訳ないというより、みんなの優しさが嬉しくて、私は小さく微笑んだ。
『……じゃあ、私も、ご一緒させてください』
「よし決まり! じゃあ早速出発しよ〜!」
それから、伊地知(いじち)さんという方の運転する大きめの車に乗り込み、私たちは公園へと向かうことになった。
助手席には五条先生。その後ろの後部座席には棘さんと、パンダさん。一番後ろの席には、私と憂太さん、真希さんが乗っている。
——みんなでお出掛けなんて楽しみだなぁ
最初は、皐月さんの言葉を思い出して躊躇っていたけれど、実際は、同い年のお友達とどこかに出掛けることなんて今まで一度もなかったから、私は内心とても楽しみでウキウキしていた。
早く着かないかなぁ……
そんな期待を胸に、私は窓の外を流れる景色を眺めていた。