第4章 天気雨
——何故か、彼女から雨の匂いがした。
それは雨に濡れた花びらから、ふわりと立ち上るような優しくて、どこか懐かしいような静かな香りだった。
今日は雨も降っていない。
——そんな不思議な子に、遠い昔に2度、会ったことがある。その子と会った時も、今日のように晴れていた。
この香りはあの子の……?
気付いたら僕は立ち上がって、彼女をじっと見つめていた。食い入るように見つめていると、彼女が恐る恐るといったように口を開いた。
『あの……どうかしましたか…?』
そう言われて、僕は我に返った。
「あ……いや、なんでもない。ごめんね」
『いえ……』
彼女は戸惑いながらも席に座った。
「じゃ、授業始めるよー。
雫の教科書なんだけど、ちょっと遅れててね。明日には届くと思うから、今日は、隣のパンダに見せてもらって」
『わかりました。パンダさん一緒に見てもいいですか?』
「おう、いいぞ」
五月雨さんと、パンダくんのそんな会話が聞こえてくる。
五条先生が、何かニヤニヤしながら僕を見ていたが、五月雨さんの準備が整ったのを確認して、授業を始めた。