第13章 五月雨
1回目の梅雨の顕現を大成功で終えて、高専の談話室でみんなと賑やかにお祝いパーティーをしてから、数日。
僕の “雨の神様” は、もの凄く可愛い変化を見せ始めていた。
『あ、五条先生! 見てください、これ! 硝子さんに髪を結んでもらったんです!』
僕を見つけると、紺色のスカートの裾をパタパタと揺らしながら、嬉しそうに駆け寄ってくる雫。
ポニーテールに結われた髪を揺らし、目をきらきらと輝かせて僕を見上げる彼女の顔には、高専に来たばかりの頃の、あの四季庁や護衛官に怯えていた暗い影なんて、もうどこにも無かった。
神通力?が綺麗に抜けて、体調に余裕ができたからだろう。
最近の彼女は、自分の感情を素直に表に出すようになり、驚くほど明るくなった。
誰に対しても丁寧で礼儀正しいところは変わらないけれど、コロコロと表情を変えて、鈴を転がすように笑い、甘えてくる。
きっと、前の護衛官に大切にされてきたのだろう。
そして、これこそが、周りの理不尽に縛られる前の、彼女の “本来の性格” なんだ。
「ん、めちゃくちゃ可愛いじゃん。でも、硝子にやってもらうなんてずるいなー。次は僕がもっと可愛く結んであげる」
『本当ですか? 約束ですよ、五条先生!』
そう言って、雫は僕に抱きついて、ニコニコしながら見上げてくる。
……あ、これ、僕の心臓に本気で良くないやつ
まさか彼女の方から、こんな風に無防備に甘えてくるようになるなんて思ってもみなかった。
あまりの愛らしさに僕の理性は、一瞬で吹き飛んでしまいそうになる。僕も、彼女の小さな身体を腕の中にすっぽりと包み込むようにして抱きしめ返し、その柔らかな髪を何度も、何度も、優しく撫でまわした。
「ねぇ、雫……。
僕、嬉しすぎてこのまま任務行きたくなくなっちゃった。今日はずっとこうして僕に甘えてる?」
『へっ……、五条先生、任務は行かないとダメですよ……っ』
そう言って、僕の胸に顔を埋める彼女。
あはは、ほんと可愛い。
僕の手で外の楽しい世界へ連れ出して、僕の腕の中でこうして安心して甘えてくれる時間が、愛おしくて仕方ががない。