第12章 液雨
言葉がなくても、こんなに温かいお話ができる。
もっと彼とも仲良くなりたくて、私は、隣を歩く棘くんを真っ直ぐに見つめて、勇気を出して言った。
『棘くん! ……私も、真希さん達みたいに、棘くんとたくさんお話しできるように、頑張るね……っ!』
みんなともっと仲良くになりたいから。
精いっぱいの決意を込めてそう告げると、棘くんは一瞬だけ丸い目を見開いてぱちぱちと瞬きをした。
だけど、すぐに私の拙い決意が嬉しかったのだろう、スマートフォンの画面を仕舞うと、私の頭をふわりと、とても愛おしそうに何度も優しく、優しく撫でてくれた。
「しゃけ、しゃけ!」
大丈夫、君ならできるよ。
そう言ってくれているような、温かい手のひらのぬくもり。
医務室の前に着くと、ちょうど中から目を覚ました憂太くんや真希さんたちが出てきて、みんなで「お土産のお披露目会」をしてワイワイと賑やかに笑い合った。
みんながくれた、たくさんのぬくもり。
——明日は、着替えもあるため、今日は部屋で寝ることにした。
ベッドの横のサイドテーブルに置かれたシロツメクサの花冠と、棘くんからもらった可愛いキーホルダーを見つめ、私はゆっくりと目を閉じた。
明日はいよいよ……梅雨の顕現の日。
溢れ出しそうだった神通力は、みんなの優しさによって、今は嘘のように穏やかに鎮まっている。
私はみんなの優しさを噛み締めながら、温かく、深い眠りの底へと落ちていった——。