第2章 私にはない絆
警察官は苦渋の表情を浮かべ、手帳をめくった。
「……現在までに被害者は三人。いずれも深夜、この先の裏路地で背後から襲われています。目撃者はおらず、防犯カメラにも犯人の姿は一切映っていません。まるで煙のように現れて消える、正体不明の幽霊のような犯人(ホシ)でして……」
警察が「幽霊」と怯えるその事件の概要を聞きながら、私は何気なく、現場の周囲に集まっている野次馬たちの顔を順番に眺めた。
……あぁ、やっぱりね。あそこにいる茶色のコートの男が犯人だ
男の靴の側面に残る、ごくわずかな赤黒い飛沫。そして、警察の動きを値踏みするような、異様に冷めきった目。幽霊なんかじゃない。
——ただ、人を殺すことにも、警察の目を盗むことにも、異常に『慣れている』だけの男だ。
私は一瞬で男の正体を見抜いたが、あえて口は出さず、隣の仁さんの様子を盗み見た。
すると、仁さんは警察の話を聞き終えた瞬間、ふっと視線を鋭く尖らせた。