第25章 眠るのは脹相の部屋で
翌朝。
「脹相、眠そう」
「……少しな」
「昨日、ちゃんと寝た?」
「……」
答えられない。
「もしかして寝不足?」
「……そうだな」
「なんで?」
「……」
まさか。
お前の布団がお前の匂いでいっぱいだったから、意識しすぎて眠れなかった。
そんなこと、言えるはずがない。
「……お前が勉強する場所を守るためだ」
「?」
「だから、これからは俺の部屋で寝よう」
「そっか」
は何の疑いもなく頷いた。
「じゃあ、そうしよう」
「……ああ」
それ以来二人で寝る時は、脹相の部屋。
今夜も、彼女は俺の胸元に収まっている。
「おやすみ、脹相」
「……おやすみ」
彼女が目を閉じ脹相はそっと腕を回す。
――ここなら大丈夫だ。
もちろん、彼女の香りはする。
それでも、あの部屋ほどではない。
彼女専用の布団でもない。
だから、ちゃんと眠れる。
……少なくとも、そう思っていた。
「……」
彼女が眠りながら、脹相の胸元にさらに近づく。
「……」
脹相の心臓が跳ねる。
「……」
やはり、少し眠れそうにない。
だが今度は自分の腕の中にいる彼女を見ながら、脹相は小さく笑った。
「……まあ、いい」
彼女の髪に顔を寄せる。
「ここなら、これくらいは許されるだろう」
そう呟いて、抱きしめる腕にほんの少しだけ力を込める。
――彼女の部屋では、彼女の香りに包まれて悶々としてしまう。
――だから、自分の部屋で眠る。
それが脹相なりの、恋人としての理性を守るための対策だった。