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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第23章 寝言



「……渾……」

「……?」

脹相が瞬きをする。

「……渾……」

また、の口から名前が出た。

「……」

脹相は数秒固まった。

そして。

「……玉犬の渾か?」

彼女は眠ったまま、少しだけ笑った。

「……渾、かわいい……」

「…………」

脹相は黙った。

数秒後。

「……そういうことか」

ようやく理解した。

伏黒恵ではない。

伏黒の式神。

玉犬の渾。

「……」

脹相はゆっくり息を吐いた。

さっきまで胸の中にあったモヤモヤが、一気に消えていく。

「……よかった」

思わず、本音が漏れた。

「……俺は何を考えていたんだ」

伏黒の名前を寝言で言っただけで嫉妬するなど
自分でも少し呆れる。

「……」

けれど。

「渾か……」

脹相は少しだけ笑った。

「それなら、許す」

眠っている私の髪を優しく撫でる。

「……しかし」

少しだけ考えてから。

「次は俺の名前も呼んでほしいものだな」

は当然、眠ったまま。

「……」

「……」

脹相はしばらく待つ。
けれど、その口から出てきたのは。

「……ん……」

それだけだった。

「……」

脹相は少しだけ肩を落とす。

「……まあ、いい」

そして、もう一度彼女の頬にそっとキスをした。

「起きている時に、いくらでも呼んでもらえばいい」

そう言って、彼女の隣に腰を下ろす。

今度は起こさないように、手だけをそっと握る。

「……おやすみ」

脹相は穏やかに笑った。

――伏黒の名前だった時は、あんなに胸がざわついたのに。

渾だと分かった瞬間、こんなにも安心する。

自分でも呆れるほど、単純だった。

それでも。

「……お前が好きだから仕方ないな」

眠るには聞こえないように呟いて
脹相はそのまま、彼女の手を握っていた。
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