第23章 寝言
その時。
「……ん……」
私が小さく身じろぎする。
「……」
脹相が動きを止める。
「……恵……」
「……」
空気が止まった。
脹相の手も止まる。
「……伏黒?」
寝言だ。
分かっている。
それでも胸の奥が、もやっとした。
恵。
幼馴染。
昔からずっと私の近くにいた男。
もちろん、脹相も恵がどういう存在なのか知っている。
恋愛感情があるわけではないことも分かっている、
分かっているのだが。
「……なぜ寝言で伏黒の名前を……」
脹相は少しだけ眉を寄せる。
「……俺の名前ではないのか」
小さな声で呟く。
眠っている私に聞こえるはずもない。
「……」
脹相は複雑な顔で私を見る。
起こすつもりはない。
ただ、なんとなく納得できない。
「……俺は、お前の恋人なのだが」
そんなことを言いながら、頬を軽くつつく。
「……」
私は当然、返事をしない。
「……」
脹相の眉間に、さらに皺が寄る。
そのまましばらく私を見ていると。