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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第22章 押し倒す



 ――結局。

 押し倒すことには成功しなかったけれど。

「……脹相」

「ん?」

「次は絶対、ちゃんと押し倒すからね」

「……楽しみにしている」

 そう言った脹相の顔は、どう見ても楽しみにしている人の顔だった。

ソファに横になった脹相を上から見下ろしながら、私は得意げに笑った。

「どう? 今日は私の勝ち」

「……そうだな」

「ふふ」

 もう一度、脹相の頬にキスをする。

 すると腰に回っていた脹相の腕に、少しだけ力が入った。

「……?」

「だが」

 低い声。

 次の瞬間。

「今度は俺の番だ」

「え?」

 ぐっと身体を引かれる。

「わっ……!」

 体勢が一瞬で入れ替わった。

 気づけば私はソファに押し倒され、脹相が上から私を見下ろしている。

「…………」

「…………」

 あまりにも一瞬だった。

「……脹相?」

「なんだ」

「ずるい」

「何がだ?」

「さっきまで動かなかったのに……」

「お前に押されるのを待っていたんだけどな」

「嘘」

「本当だ」

 脹相はそう言って、私の両手をそっとソファへ置く。

 逃げられないようにするというより、ただ優しく包み込むように。

「……これは…嫌か?」

 その声に、私は首を横に振る。

「ううん」

「そうか」

 安心したように、脹相の表情が柔らかくなる。

 そして、頬にキス。

「……」

 反対側の頬にも。

「……脹相」

「ん?」

「なんか、さっきより嬉しそう」

「ああ」

 脹相は素直に答える。

「お前が俺を押し倒そうとしてくれたのが、嬉しかった」

「……」

「俺に触れたいと思ってくれたのだろう?」

「……うん」

「それが嬉しい」

 そう言って、今度は額へキスを落とす。

「だから」

 少しだけ顔を近づけて。

「今度は俺から、お返しだ」

 唇が重なる。

 触れるだけの優しいキス。

 離れたと思ったら、もう一度。

「……ふふ」

「どうした?」

「なんか、嬉しい」

「俺もだ」

 脹相の手が、そっと私の髪を撫でる。

「……好きだ」

「私も好き」

「愛している」

「……私も」

 その答えを聞いた脹相は、満足そうに笑った。

 そして最後に、もう一度だけ優しくキスをする。

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