第21章 勉強と昔話
「それに」
一度言葉を切ってから、恵が続けた。
「顔がいいことにも自覚がない」
「……え?」
野薔薇が即座に食いついた。
「嘘でしょ⁈」
「本当」
「自分の顔見たことある⁈」
「あるよ……」
「鏡で⁈」
「鏡で」
「じゃあなんで自覚ないのよ!」
私は困ってしまう。
「……普通だと思うけど」
「普通じゃないわよ!」
野薔薇が力説する。
「いや、でも……」
恵が少し考えてから言う。
「原因は分かる」
「近くに五条先生がいたから」
「ああ……」
野薔薇が一瞬で納得する。
「それはバグるわ」
「だろ」
「だって、五条先生が身近にいたら、自分の顔がどのくらいなのか分からなくなるわよ」
恵は私を見る。
「お前は昔から、自分のことを少しも特別だと思ってなかった」
「……」
「呪術も、勉強も、顔も全部、できる人がそばに居る状態だった」
私は少しだけ目を伏せる。
すると、野薔薇がふと何かを思い出したように言った。
「でもさ」
「ん?」
「さっき花嫁修行してたって言ってたじゃない」
「うん」
「それって、将来結婚するためだったの?」
私は少し考える。
「……そうだね」
「どんな人と?」
その質問に、私は少しだけ黙った。
「誰か決まってたわけじゃないよ」
「じゃあ、どういうつもりで?」
「……五条家に恩返しするため」
その答えに、みんなが少し驚く。
「恩返し?」
悠仁が聞き返す。
私は小さく頷いた。
「私は小さい頃から五条家で育ててもらったから」
「……」
「生活も、教育も、呪術も。何もかも与えてもらったものだからさ」
私は少し遠くを見る。
「だから、いつか私がちゃんとした人になったら、その分を返したいって思ってた」
「でも、どうやって?」
野薔薇が聞く。
「……私は、そんなに強いわけじゃないから、呪術で恩返しするってよりか、どこかの家に嫁ぐんだと思ってた」
「嫁ぐ?」
「うん。いつかは、ね。」
私は頷く。
「五条家にとって、私が何か役に立てるなら、それでいいと思ってた」
恵は黙って聞いている。
そして、昔のことを思い出す。