第21章 勉強と昔話
「じゃあ、ここはこうしたら分かりやすいよ」
私は悠仁、野薔薇、恵の三人のノートを順番に見ながら教えていく。
「なるほど!」
「分かったわ」
「……確かに」
三人が頷く。
「さすが2個先輩、教えるの上手いな」
悠仁が感心すると、恵がぽつりと言った。
「昔から面倒見良かったからな」
「昔から?」
野薔薇が聞き返す。
「ああ。俺が中学の頃も、よく教えてもらってた」
恵は少し考えてから続ける。
「二つも離れてるから、俺が入学した時にはもう人だかりだったけどな」
「人だかり?」
「こいつのところに人が集まってた」
「そんなに?」
「まあな」
恵は淡々と答える。
「任務の前に迎えに行くこともあったけど、誰かに教えてたりしてなかなか帰れなかった」
「なんで伏黒が迎えに行くんだ?」
「五条さんに頼まれてたんだよ。変なやつに絡まれないように見てろって」
「ああ、なるほど」
悠仁が頷く。
野薔薇がふと二人を見る。
「……そういえば」
恵が、ふと昔を思い出したように口を開いた。
「お前って、昔から鈍いよな」
「え、何が?」
「自分ができてることに関して。」
私は首を傾げる。
恵は少しだけ目を細めた。
「お前にとっては、努力すること自体が当たり前だったもんな」
「……」
「五条家にいたからだろうけど」
その言葉に、私は黙る。
「朝から稽古して、勉強もして、その上で呪術の勉強もする」
恵は淡々と話す。
「それでも、できたことを喜ぶより、できなかったことを気にしてた」
「そんなことあった?」
「あった」
即答だった。
「俺が中学の頃にも、お前が一人で稽古やら花嫁修行してるのを何度も見た」
「……」
「普通なら十分すごいことでも、お前にとっては『できて当然』だった」
悠仁と野薔薇が黙って聞いている。
「だから俺は、昔から思ってた」
恵は私を見る。
「お前は、自分がどれだけ頑張ってるのか分かってない」
私は少し困ったように笑った。
「……そうでもないけど」